誰もいないはずの空き家で、私がそっと草刈機を止めた理由
――「効率」と「命」の狭間で悩む、私の90分の現場段取り

岡山県の静かな町で、空き家の管理や見回りの仕事をしています。人が住まなくなって久しいお家や、雑草が伸びきったお庭。一見すると「寂れて放置された場所」に見えるかもしれません。でも、一歩その敷地に足を踏み入れると、そこが人間だけのものではないことに気づかされます。

青々と茂った草むらをかき分ければ、小さなトカゲが日向ぼっこをしていたり、カエルがこちらをじっと見つめていたり。いつの間にかそこは、たくさんの小さな命たちが身を寄せ合って暮らす、大切な隠れ家(バイオトープ)になっているのです。

お家を長持ちさせるため、そしてご近所様にご迷惑をおかけしないために、お庭を綺麗に整えることは私の大切な役目です。しかし、そこで私はいつも、一つの大きな葛藤と向き合うことになります。

1.「プロとしての責任」と「目の前の命」の狭間で

お金を払ってご依頼くださるお客様にとっては、「少しでも早く、敷地内を隅々まで綺麗にたくさん刈ってほしい」と思われるのが当然です。私自身、プロとしてその期待に全力でお応えしなければならないという強い責任を感じています。

だからこそ、大きな音を立てる草刈機(刈払機)を手にするとき、いつも胸の奥が少しだけチクリと痛むのです。

端から一気にバリバリと効率重視で刈り進めてしまえば、時間はかかりませんし、作業も早く終わります。お客様の要望にも、ビジネス的な正しさにも、最短距離で応えられるでしょう。けれどそれは、草むらの中で必死に生きている虫やトカゲたちの逃げ道を、容赦なく奪ってしまうことでもあるのです。

お客様のために1分1秒でも早く綺麗にすべきという想いと、目の前の小さな命を無下に奪いたくないという想い。どちらか一方を切り捨てるのではなく、お客様が大切にされている資産を守るプロとしての責任を果たしながら、その土地の自然や命を預かる者としての責任も全うしたい。そのギリギリの境界線を模索した結果たどり着いたのが、作業効率を一切落とさずに、ほんの少しの段取りで生き物たちの命を守るという、私なりの「バランス」でした。

2. 1件90分。限られた時間の中で私が実践していること

私の空き家管理の作業時間は、1件あたり約90分です。このタイトな時間枠の中で、プロの仕上がりと命への配慮を両立させるために、以下のような工夫をしています。

■ 最初に上の半分だけを刈る「高刈り」の段取り

背丈の高い草が激しく繁茂している場合は、現場に到着してすぐ、1回目でまず上の半分だけを優しく「高刈り」します。その後、すぐに根元を刈るのではなく、あえて少しの時間を空け、その間に建物の見回りや換気、簡易清掃といった他の管理メニューを先に遂行します。

この段取りのポイント

  • 約90分の作業時間の中で、前半と後半に工程を分ける
  • 日当たりや周囲の変化を察知した生き物たちが、自発的に外へ避難できる「わずかな猶予」が生まれる
  • 全体の作業効率を一切落とさず、決められた時間枠の中で行う時間配分の工夫
  • 追加費用の発生も、作業の長引きも一切なし

■ 驚く前に優しく「退路」を作る草刈り

実際に草を刈り進める際も、端から追い詰めるのではなく、敷地の真ん中から外側に向かって、あるいは生き物たちが逃げ込める周辺の茂みの方へと順番に刈るようにしています。ほんの少しのルートの工夫ですが、これだけでも機械の音や振動に驚いた生き物たちが、自分の足で安全な場所へと避難できるようになります。

■ 物置を開ける前の、ささやかな挨拶

長年触られていない物置の隅や、お家の床下通気口の近くをお掃除するときも、いきなり手を突っ込んだりはしません。まずは「今からお掃除させてもらいますよ」という合図の代わりに、物置の壁や荷物をトントン、と軽く叩いてこちらの気配を事前に伝えます。それだけで、ほとんどの生き物たちは慌てて自分から逃げていってくれます。


3. 生き物を大切にすることが、実はお家を守ることに繋がる

「虫やトカゲなんて放っておけばいいのに」と思われるかもしれません。けれど、彼らを大切にすることは、巡り巡ってお家を健全に保つことにも繋がっているのです。

生き物を守ることがお家を守る理由

  • お庭のクモ・トカゲ・カエルは木造住宅の大敵シロアリの羽アリや蚊・ハエを食べてくれる「自然の番人」
  • 薬で全滅させると、かえって特定の害虫が大発生するリスクがある
  • 強い薬剤を使わない管理は、近隣のペット・家庭菜園・お子様にも安心
  • ご近所トラブルを防ぐ、優しい管理につながる

まとめ:ただ綺麗にするだけでなく、地域に優しい管理を

空き家を管理するというのは、ただ機械的に草をむしり、家を綺麗にするだけのものではないと私は考えています。

お客様の大切な資産を最優先で守りながら、その土地に息づく小さな命の営みにもほんの少しだけ耳を傾け、人間も自然も、お互いに心地よく暮らせる距離感を守ること。そんな、ビジネスとしての責任感と温かみのある環境配慮を両立させた空き家管理を、これからも一軒一軒、大切に続けていきたいと思っています。

岡山県の空き家管理・見回りサービス「ICHIMA」

高梁市・倉敷市を中心に、お庭の草刈りや建物の定期巡回を行っています。大切な資産を、環境にも人にも優しい方法で守ります。ご相談はお気軽にどうぞ。

LINEで無料相談する 料金を見る サービス一覧へ